カスタム指示を使うと設定を繰り返す手間を減らせますが、どの製品でも同じ仕組みとは限りません。ChatGPT、Claude、Gemini、Microsoft 365 Copilotは、アカウント全体に適用する指示、メモリやチャット履歴によるパーソナライズ、プロジェクトのコンテキスト、一時チャットを、それぞれ異なる組み合わせで提供しています。メニュー名、プランや地域による利用条件、組織が管理するワークスペースの制御、データの扱いは変わります。同じ動作をすると思い込まず、各社の現在の設定ページを確認してください。
少し設定しておけば、日常的なタスクで同じ説明を入力する手間を省けます。ただし、すべての回答が改善するわけではありません。古い指示、矛盾する指示、範囲が広すぎる指示、機密性のある情報を含む指示は、回答を悪化させたり、意図した範囲を超えて情報を伝えてしまったりする可能性があります。
この記事では、設定方法、含める内容、特によくある間違いを順に説明します。
カスタム指示には、継続して使える低リスクの好みを設定します。メモリには、保存されても問題ない事実だけを残します。顧客データ、認証情報、機密のプロジェクト名、機密性のある個人情報の保管場所として、どちらも使わないでください。
設定の場所
ウェブ版またはデスクトップ版ChatGPT:Settings → Personalizationを開き、カスタマイズを有効にして、Custom Instructions欄に指示を入力します。OpenAIの現在の文書では、以前の二つの入力欄ではなく、一つの欄が説明されています。メモリの設定もSettings → Personalizationにあります。更新されたメモリ機能は、チャット、ファイル、接続したアプリをもとに、自動更新されるメモリ要約を作成できます。一部のアカウントでは、従来の保存済みメモリの設定が表示される場合もあります。OpenAIのカスタム指示ガイドとメモリのFAQを参照してください。
Claude:アカウント全体への指示はSettingsにあるInstructions for Claudeで確認し、特定の範囲の作業にはプロジェクトの指示とナレッジを使います。Anthropicの現在の文書によると、Projectsはすべてのユーザーが利用できます。ナレッジの拡張機能、共同作業、共有、組織が管理するワークスペースの動作は、プランと組織によって異なります。AnthropicのパーソナライズガイドとProjectsの文書で現在の動作を確認してください。
Geminiアプリ:指示、過去のチャットを使うメモリ、接続したアプリ(Connected Apps)によるパーソナライズのうち、自分のアカウントで使える機能を確認してください。Googleのパーソナライズガイドで説明されている機能には個人用Googleアカウントが必要で、職場、学校、保護者による管理対象のアカウントは対象外です。利用条件も機能ごとに異なります。この制限をGeminiの全機能やWorkspace内のGeminiにまで一般化しないでください。私的なデータを接続する前に、GeminiのパーソナライズガイドとGeminiのプライバシーハブを確認してください。
Microsoft 365 Copilot Chat:Microsoftのガイドでは、Copilot Memory、チャット履歴によるパーソナライズ、カスタム指示、一時チャットが説明されています。職場のアカウントで使える管理機能を、管理者に確認してください。一時チャットでも組織の保持ポリシーに基づいて保存され、その期間中に組織のIT管理者がアクセスできる場合があります。これは職場のアカウント向けの説明であり、個人向けCopilotの動作を保証するものではありません。MicrosoftのCopilotパーソナライズガイドを参照してください。
この記事の残りでは、ChatGPTの構造を標準として説明しますが、同じ原則はすべてのツールに当てはまります。
二部構成で書く
現在のChatGPT画面では、Custom Instructionsの入力欄は一つです。その中で、文章を二つの部分に分けて見出しを付けられます。
- コンテキスト:作業に実質的な影響を与える、低リスクの事実。
- 回答の標準設定:スタイル、構成、不確実性、レビューの好み。
このように分けると、伝える内容を整理できます。前半は事実、後半は回答のスタイルです。
パート1:自分について
モデルから同じことを繰り返し聞かれないよう、必要な背景情報を伝えます。例えば、次のような内容です。
- 役割と分野。「私はエストニアのタリンにあるB2B SaaS企業のシニアプロダクトマネージャーです。」
- 仕事上の背景。「当社の顧客は北欧の中堅EC企業です。」
- 主な業務。「AIは主に、仕様書の作成、顧客インタビューの分析、ロードマップの計画、チーム向け連絡文の下書きに使います。」
- 関連する経歴。「デザインを学び、五年間デザイナーとして働いた後、プロダクト職に転向しました。」
- 仕事で使う言語。「主に英語で書き、時々エストニア語も使います。エストニア語は十分使えますが、母語ではありません。」
- 制約。「実際の顧客データを含まない架空の例を使ってください。アシスタントから注意を促されても、自分でデータを確認する必要があります。」
要点を絞った数文から始め、試してください。この長さなら指示が必ず守られる、という基準はありません。無関係な内容、機密性のある内容、矛盾する内容は削除します。
応用できる便利なテンプレート:
私は[役割]として[会社/業界]で働いています。所在地は[所在地]です。主な仕事は[主な業務]です。[関連する経歴]の経験があります。[使用言語]で文章を書きます。文体は[文体を表す言葉、文体を表す言葉]です。[大切にしていること]を重視しています。
パート2:回答方法
回答の標準設定では、普段どのように回答してほしいかをモデルに伝えます。次のような設定を試せます。
- 長さと構成の標準設定。「標準では短く回答してください。箇条書きと短い段落を使い、前置きは省いてください。」
- トーン。「率直に答え、不要な飾り言葉は省いてください。必要な不確実性の説明は残し、間違いは明確に訂正してください。私の話し方に合わせてください。」
- 避ける表現。「『最大限に活用する』『利活用する』『今後に向けて』『変化の激しい現代社会では』といった表現は使わないでください。『素晴らしい質問です』で回答を始めないでください。」
- 不確実性の示し方。「確信がない場合は明示してください。不確かな事実には[不明]を付けてください。不足している情報を自信ありげな推測で埋めないでください。」
- 求める具体的な対応。「トレードオフについて尋ねた場合は、一方を勧める前に両面を示してください。意思決定について尋ねた場合、重要な情報が欠けていれば先に確認の質問をしてください。」
- コードや技術的な内容の扱い。「コードを共有したら、バグやセキュリティ上の問題を率直に指摘してください。コードの動作を説明するコメントは追加せず、コードを読めるものとして扱ってください。改善案は示しても、依頼しない限り書き直さないでください。」
試して調整するためのテンプレート例:
わかりやすい日本語で回答してください。不要な前置きや定型句(「素晴らしい質問です」「お役に立てれば幸いです」)は省いてください。詳しい説明を明示的に求めない限り、短い回答を標準にしてください。
トーン:率直で、少しくだけた表現にしてください。短い段落を使い、役立つ場合は箇条書きにしてください。間違いは明確に訂正し、必要な不確実性の説明は残してください。私がくだけた表現で書いた場合は、その文体に合わせてください。
事実に確信がない場合は明示してください。不確かな主張には[不明]を付けてください。情報源を捏造しないでください。
意思決定やトレードオフについて尋ねたとき、不足している情報によって推奨案が大きく変わるなら、確認の質問をしてください。そうでなければ、関係する選択肢を比較し、推奨案とその限界を説明してください。数値による確信度を作り出さないでください。
私のために文章の下書きを作るときは、元の事実と意図を保ってください。別案は役立つ場合だけ示してください。次にすることを書くのは、そのタスクで必要な場合だけにしてください。約束や依頼を勝手に付け加えないでください。
保存したら、低リスクのタスクで試してください。標準設定が回答を悪くするなら、見直すか削除します。指示を長くすれば直るとは限りません。
ChatGPTのメモリ
メモリはカスタム指示とは別の機能です。OpenAIの現在の標準的なメモリ機能は、利用可能で有効になっている場合、チャット、ファイル、接続したアプリから役立つコンテキストを自動的にまとめ、メモリ要約(Memory Summary)を作成できます。この要約は概要を示すもので、パーソナライズに影響する情報の網羅的な一覧とは限りません。一部のアカウントでは従来の保存済みメモリ機能も引き続き利用でき、保存済みメモリはチャット履歴とは別に管理されます。
長所は、説明し直す手間が減り、よりパーソナライズされた回答が得られることです。
短所は、再利用するつもりがなかったコンテキストを保持したり、再構成したりする可能性があることです。要約に関連する情報源がすべて表示されるとも限りません。設定が引き継がれると思い込まず、アカウントを切り替えたら設定を確認してください。
有効な使い方:
- アカウントのルールに従ってそのコンテキストを保持する価値があると判断した場合だけ、メモリを有効にします。
- Settings → Personalization → Memoryと、パーソナライズされた回答の情報源表示を確認します。機密性のある情報、古い情報、誤って取り込まれた情報を修正または削除してください。ただし、要約にすべての情報源が載っているとは限りません。
- 明示的で継続して使う指示はCustom Instructionsに入れます。ChatGPTに事実を覚えるよう頼んだ場合は、書き換わらないデータベースに記録したつもりにならず、意図どおりに反映されているか確認してください。
- メモリ、カスタム指示、プラグインを参照させたくない場合は、パーソナライズしない一時チャット(Temporary Chat)を選びます。パーソナライズする一時チャットでは、それらを参照できますが、新しいメモリは作成されません。どちらのモードでも、会話を保存すると通常のチャットに変わり、アカウントの設定が適用されます。保持や安全上の制限については、一時チャットのFAQとプライバシーガイドを参照してください。
- 情報を完全に削除するには、現在の削除手順に従ってください。要約、チャット、ファイルからの削除に加え、その情報を提供できるアプリの接続解除が必要な場合もあります。メモリをオフにしても過去のチャットは削除されません。再びオンにすると、それらのチャットからコンテキストが再構成される場合があります。
プライバシーを特に重視する場合は、メモリをオフにしておくことも検討してください。カスタム指示もアカウントに保存されるデータなので、秘密の保管場所にはなりません。メモリの管理、モデルの訓練への利用設定、削除、業務データを使う許可は、それぞれ別の判断です。一時チャットは、データが一切保持されないという保証でも、機密情報を共有してよいという許可でもありません。
何をどこに置くか
次のように分けます。
| コンテキストの種類 | 保存場所 | 例 |
|---|---|---|
| 安定した回答の好み | カスタム指示 | 「短い段落を使い、不確実性を明示する。」 |
| 継続して使う、機密性のない個人情報 | 必要に応じてメモリ | 「メートル法を好む。」 |
| プロジェクト固有のコンテキスト | プロジェクト/ワークスペースの指示 | 「このプロジェクトは、一般公開するAI学習サイト用です。」 |
| 機密性のある業務情報 | そのデータを扱うことが承認されたツールと作業手順に限る。承認がなければ入力しない | 顧客の問題、契約条項、社内向け下書き |
| 一度限りの私的な情報 | 共有が必要で、ツールの利用条件と管理機能が適切な場合を除き、入力しない | 個人の医療、法律、家族、財務に関する情報 |
この表は情報の置き場所を考えるための目安であり、アップロードの許可を意味するものではありません。プロジェクト名、職場のログイン、一時チャットという表示だけでは、そのデータを扱う承認があるとはいえません。練習には架空の例を使いましょう。
Claudeの指示とProjects
Claudeには、アカウント全体のInstructions for Claudeと、プロジェクト単位の指示があります。Projectは、固有のチャット履歴とナレッジベースを持つ独立したワークスペースです。プロジェクトの指示は、そのプロジェクト内のチャットだけに適用されます。
アカウント全体の指示には安全な標準設定だけを入れます。扱うことが承認された、まとまりのある作業ごとにプロジェクトを作り、必要最小限のコンテキストを与え、現在のメモリとナレッジの動作を確認してください。製品が似た「Project」という名称を使っていても、コンテキストの共有や保持が同じとは限りません。
これは、関連性のない複数の分野を行き来するときに便利です。個人用の資料と顧客の資料を分け、ファイルを追加する前にプロジェクトの公開範囲、メンバーの権限、共有されるナレッジを確認してください。プロジェクトは情報を整理するための機能であり、セキュリティ上の境界が確保されている証拠ではありません。意図した分離を維持する責任は、利用者にあります。
よくある間違い
避けるべきパターンをいくつか紹介します。
指示が長すぎる。長い指示は管理が難しくなります。繰り返し必要になる少数の標準設定から始め、試してください。入力欄の上限は現在のアカウントで確認します。上限は、欄を埋めることを勧める数字ではありません。アシスタントが守らないからといって、必要な安全上のルールを削除してはいけません。その場合は、その用途での利用をやめるか、作業手順を変えてください。
矛盾する指示を重ねる。「不確実性を一切示さない」は「不確かな主張を明示する」と矛盾します。どちらを優先するか明記してください。事実の正確さと必要な注意書きは、短さやトーンより優先します。温かみと率直さは両立できます。
選択肢を狭める指示。「必ずエストニア語で回答する」「必ず箇条書きを使う」といった指示は、英語の文章がほしい場合には邪魔になります。絶対条件ではなく標準設定にしてください。「会話文が適したタスクを除き、標準では箇条書きを使う」とします。
適用される範囲を忘れる。アカウント全体の標準設定は、関係のない会話にも影響する場合があります。一方、プロジェクトや一時チャットのモードによって、適用される指示が変わることもあります。誕生日カードなら「この下書きは、温かく会話的な文章にしてください」と伝えます。上書きできたと思い込まず、実際の回答を確認してください。
役立つ実験
架空のメモを使います。「ワークショップは金曜日です。会場は未定です。」そこに「不足している事実を作り出さない」という標準設定を適用し、「このメモだけを使って短い招待文を書いてください」と依頼します。
2026年9月6日にCodexがこの記事のために生成した回答例の日本語訳:
金曜日のワークショップにぜひご参加ください。会場はまだ決まっていません。
この回答は、住所や「会場は後日お知らせします」という約束を勝手に付け加えず、会場が未定であることを保っています。これはAIが生成した教材用の例であり、ChatGPTに保存した設定を実行した証拠でも、設定が一貫して守られるという証拠でもありません。自分で試すときは、会場、時刻、約束を勝手に付け加えた回答は採用しないでください。
低リスクの好みを使って、カスタム指示を試験運用してください。コンテキストが繰り返される場合は、安定しているか、安全に保持できるか、実際に役立つかを確認してから、アカウント全体の指示へ移します。
実際の動作と、アカウントに保存される内容を確認してください。役割、プロジェクト、製品設定が変わる頻度に合わせて、カレンダーに見直しの予定を入れます。見直しに最適な間隔が一律に決まっているわけでも、品質の向上が続く保証があるわけでもありません。
少量から始めて見直す
低リスクの標準設定を二つか三つ追加し、新しいチャットを開いて、実際のタスクで試します。指示は役立ったか、無関係なコンテキストが回答に混ざらなかったか、自分のプランの条件に基づいて提供事業者がその情報を保持しても問題ないかを確認してください。役割、プロジェクト、プライバシー要件が変わったら、メモリと指示を見直します。
製品情報の基準日:2026年9月6日
OpenAIのカスタム指示の文書、メモリのFAQ、一時チャットのFAQ、データ管理のFAQ、AnthropicのパーソナライズとProjectsの文書、GoogleのGeminiパーソナライズガイドとGeminiのプライバシーハブ、MicrosoftのCopilotパーソナライズガイドを参照しています。



