一般向けAIで最も活用されていない機能は、カスタム指示です。ChatGPTではカスタム指示、Claudeではユーザースタイル設定、Geminiではコンテキストと呼ばれます。名称にかかわらず、考え方は同じです。利用者に関する事実とモデルに望む振る舞いを保存し、すべての会話に自動的に適用します。
初心者がAIについてできることの中で、最も投資対効果が高いのは、この設定に10分をかけることです。それ以降は、会話を始めるたびに自分が誰で、何をしており、何を求めているかを説明し直す必要がなくなります。モデルはそのコンテキストを自動的に受け取ります。
この記事では、設定方法、含めるべき内容、特によくある間違いを順に説明します。
カスタム指示には、安定した低リスクの好みを設定します。メモリには、保存されても問題ない事実を設定します。顧客データ、認証情報、機密プロジェクト名、機微な個人情報の保存場所として、どちらも使わないでください。
設定の場所
ChatGPT:プロフィールアイコン → Settings → Personalizationをクリックします。関連する機能は2つあります。Custom Instructions(自分が誰で、どのような回答を望むかを自由に記述する欄)と、Memory(会話をまたいで事実を自動的に取り込む仕組み)です。
Claude:プロフィールアイコン → Settings → Profileをクリックします。すべての会話に適用されるプロフィール説明を設定できます。Claudeには、プロジェクト単位でコンテキストを管理するProjectsもあります。詳しくは後ほど説明します。
Gemini:保存済み情報/「Gemini personalisation」の設定は、Geminiアプリの設定(一部はGoogle Account → Data & privacy)にあります。正確なメニュー名は変わることがありますが、設定パネル自体は用意されています。ChatGPTの機能ほど発達しておらず、指示よりも利用者に関する事実に重点を置いています。
Copilot(Microsoft 365):個人向けプランではカスタマイズ機能が限定されています。法人向けプランには、ITチームが設定する管理者制御のコンテキストがあります。
この記事の残りでは、ChatGPTの構造を標準として説明しますが、同じ原則はすべてのツールに当てはまります。
効果的な2部構成
ChatGPTのカスタム指示は、2つの入力欄に分かれています。
- 「ChatGPTにどのようなことを知っておいてほしいですか?」 — 自分についてのセクション。
- 「ChatGPTにどのように応答してほしいですか?」 — 振る舞いのセクション。
この分割は、それぞれ異なる問いに答えるため便利です。1つ目は事実、2つ目はスタイルです。
パート1:自分について
ここでの目的は、そうでなければモデルが繰り返し質問しなければならないコンテキストを与えることです。含める価値があるものには、次のようなものがあります。
- 役割と分野。 「私はエストニアのタリンにあるB2B SaaS企業のシニアプロダクトマネージャーです。」
- 仕事上のコンテキスト。 「当社の顧客は北欧の中堅Eコマース企業です。」
- 時間を使っている業務。 「AIは主に、仕様書の作成、顧客インタビューの分析、ロードマップの計画、チーム向け連絡文の下書きに使います。」
- 関連する経歴。 「デザインを学び、5年間デザイナーとして働いた後、プロダクト職に転向しました。」
- 仕事で使う言語。 「主に英語で書き、時々エストニア語も使います。エストニア語は十分使えますが、母語ではありません。」
- 制約。 「個人向けAIツールに顧客データを保存しないようにしています。匿名化した例を使うよう注意してください。」
4~6文に収めます。長ければ良いわけではありません。モデルはこれらの事実を使って回答を調整しますが、履歴書を渡しても役には立ちません。
応用できる便利なテンプレート:
私は[場所]にある[会社/業界]で[役割]を務めています。仕事には[主な活動]が含まれます。[関連する過去の経験]の経歴があります。[言語]で文章を書きます。自分のスタイルは[形容詞、形容詞]だと思います。[重視することを1つか2つ]を大切にしています。
パート2:回答方法
大きな効果のほとんどは、2つ目の入力欄から得られます。ここでは、すべての会話でモデルにどのように振る舞ってほしいかを伝えます。効果的なパターンには、次のようなものがあります。
- 長さと構成の標準設定。 「標準では短く回答してください。箇条書きと短い段落を使い、前置きは省いてください。」
- トーン。 「率直に答えてください。謝罪、過度に曖昧な表現、『お役に立てれば幸いです』は不要です。私の会話調に合わせてください。」
- 避けるもの。 「『leverage』『utilize』『going forward』『in today’s fast-paced world』という表現を使わないでください。『良い質問ですね』で回答を始めないでください。」
- 確信度の調整。 「確信がない場合は、明示してください。不確かな事実には[unclear]を付けてください。不足している情報を自信ありげな推測で埋めないでください。」
- 求める具体的な習慣。 「トレードオフについて尋ねた場合は、一方を推奨する前に両面を示してください。意思決定について尋ねた場合、重要な情報が欠けていれば先に確認の質問をしてください。」
- コードや技術的な内容の扱い。 「コードを共有したら、バグやセキュリティ上の問題を率直に指摘してください。コードの動作を説明するコメントは追加しないでください。コードを読めるものとして扱ってください。改善案は示しても、依頼しない限り書き直さないでください。」
信頼できるテンプレート例:
明確で平易な英語で回答してください。不要な前置き(「良い質問ですね」「お役に立てれば幸いです」)は省いてください。詳しい説明を明示的に求めない限り、短い回答を標準にしてください。
トーン:率直で、少しくだけた表現を使い、謝罪調にはしません。短い段落と箇条書きを使ってください。私がくだけた表現で書いた場合は、その文体に合わせてください。
事実に確信がない場合は、明示してください。不確かな主張には[unclear]を付けてください。情報源を捏造しないでください。
意思決定やトレードオフについて尋ねたとき、重要な情報が欠けていれば1つか2つの確認質問をしてください。そうでなければ両面を簡潔に示した後、確信度とともに推奨案を提示してください。
私のために文章の下書きを作るときは、標準で2~3案を生成してください。メールの下書きは必ず明確な次のステップで終えてください。「平素よりお世話になっております」でメールを始めないでください。
保存してください。次の10回の会話で試します。何か具体的に気になる点が出たら、そのとき編集しましょう。
ChatGPT Memory
Memoryは、これとは別の自動的な仕組みです。会話をまたいで事実(「AndresはAI Expertで働いている」「彼はベジタリアンである」「メートル法を好む」)を取り込み、将来の会話に適用します。
長所は、説明し直す手間が減り、よりパーソナライズされた回答が得られることです。
短所は、記憶してほしくないことまで記憶する可能性があること、アカウントを切り替えても引き継がれないこと、記憶されている内容の確認に多少の注意が必要なことです。
有効な使い方:
- よりパーソナライズされたアシスタントがほしいなら、Memoryをオンにします。
- Settings → Memoryを定期的に確認し、機微な情報、古い情報、誤って取り込まれた情報を削除します。
- 重要なことを記憶させたい場合は、ChatGPTに明示的に伝えます。「私が[会社]でAIチームを率いていることを覚えておいてください」。これにより事実として保存されます。
- 記憶させたくない場合は、「このことは後で使うために記憶しないでください」と伝えるか、Temporary Chat(モデル選択欄の横にあるアイコン)を使います。一時チャットは保存されず、Memoryにも反映されません。
プライバシーを非常に重視する場合は、Memoryをオフにしたまま、カスタム指示だけを使ってください。完全に管理できる状態で、利便性の80%を得られます。
何をどこに置くか
次のように分けます。
| コンテキストの種類 | 保存場所 | 例 |
|---|---|---|
| 安定した回答の好み | カスタム指示 | 「短い段落を使い、不確実性を明示する。」 |
| 安定した機微ではない個人情報 | 任意のMemory | 「メートル法を好む。」 |
| プロジェクト固有のコンテキスト | プロジェクト/ワークスペースの指示 | 「このプロジェクトは、一般公開するAIトレーニングサイト用です。」 |
| 機微な業務情報 | 承認された業務用の会話のみ | 顧客の問題、契約条項、社内向け下書き |
| 一度限りの私的な情報 | Temporary Chatを使うか、AIを使わない | 個人の医療、法務、家族、財務に関する情報 |
この分け方により、何を開示したか忘れるほどグローバル設定を雑多なデータベースにすることなく、利便性を得られます。
Claude Projects:異なる方式
Claudeの方式は少し異なります。すべてに適用される単一の指示ではなく、ClaudeにはProjectsがあります。プロジェクトは、カスタム指示、ナレッジファイル、そのプロジェクト内の会話をまとめたフォルダーです。
使い方は、仕事の主な領域ごと(「個人用」「クライアントX」「社内戦略」など)にプロジェクトを作成し、それぞれに固有のコンテキストを設定し、適切なプロジェクト内で会話を始めるというものです。モデルは、そのプロジェクトのコンテキストを内部のすべての会話に引き継ぎます。
これは、関連性のない複数の分野を行き来する人にとって非常に便利です。「個人用」プロジェクトがクライアント業務について知る必要はなく、その逆も同じですが、それぞれの内部では豊富なコンテキストを利用できます。欠点は、プロジェクトに整理する手間です。
よくある間違い
避けるべきパターンをいくつか紹介します。
指示が長すぎる。 3ページの指示は、3段落の指示より劣ります。モデルは200~500語の指示なら安定して処理できますが、それを超えると一部を無視し始めます。
矛盾する指示を重ねる。 「親しみやすく率直に。空疎な表現は避けつつ温かみを出す。短くしながらすべてを網羅する」。どちらかを選んでください。矛盾はモデルを混乱させ、出力を不安定にします。
自由を奪う指示。 「必ずエストニア語で回答する」「必ず箇条書きを使う」といった指示は、英語の文章がほしい場合には煩わしくなります。絶対条件ではなく標準設定にしてください。「会話文が適したタスクを除き、標準では箇条書きを使う」とします。
すべてに適用されることを忘れる。 カスタム指示に「簡潔にし、温かみのある前置きは不要」と記載すれば、親しみやすい誕生日カードの下書きがほしかった会話まで、すべて簡潔になります。必要に応じて会話単位で上書きします。「このタスクでは標準のスタイルを無視し、温かく会話的な文章にしてください」。
役立つ実験
今日、カスタム指示を設定してください。そして翌週にかけて、新しい会話へ同じコンテキストを入力していることに気づくたび、「プロダクト職です」「短い回答を好みます」「謝らないでください」などと書く手を止めます。その繰り返し使うコンテキストは、毎回のプロンプトではなく、カスタム指示に入れるべきものです。
1週間が終わる頃には、指示が実際の使い方に合うものへ進化しています。一度読み直して編集してください。その後は、仕事の変化に応じて、おそらく数か月ごとに調整する程度になります。必要な総時間はわずかですが、出力品質の向上は持続します。
10分で、一度だけ設定
カスタム指示は、AIにおいて最も投資対効果の高い標準設定の一つです。無料で、10分しかかからず、すべての会話を目に見えて改善します。使っている初心者はほとんどいません。使う人は、最初から異なる水準で作業できます。どの会話もすでに先へ進んだ状態から始まり、1年間に積み重なる時間の節約は大きなものになります。
今すぐ設定しましょう。



