エンジニアが、雇用主の未公開製品に含まれるコードのバグで行き詰まっています。午後九時、個人のChatGPTはすでに開いており、関数全体を貼り付けるのが最も早く答えを得る方法に思えます。2023年3月、Samsungの半導体部門がChatGPTの利用を認めてから約3週間で、同社はまさにこの種の事例を3件確認しました。1人目は半導体データベース用プログラムのソースコードを貼り付けてエラーの特定を依頼し、二人目は装置関連のコードを送って「コードの最適化」を求め、3人目は会議の録音をアップロードして議事録の作成を依頼しました。Samsungは直ちに、1回のプロンプトを1,024バイトまでとする緊急の上限を設けました(The Economist Koreaの報道をMashableが英語で要約)。2023年五月1日にはさらに対応を進め、会社所有の端末で生成AIツールの利用を一時的に全面制限しました(TechCrunchによる2023年の報道)。
報道された事例は、悪意がなくても起こり得るものでした。機密情報を第三者のサービスへ送信すると、外部に公開されなくても、ポリシーや契約に違反したり、所有者による情報管理を弱めたりする可能性があります。具体的な法的効果や通知義務は、個別の事実と管轄によって異なります。
「業務上の機密」が実際に指すもの
仕事関連のすべてが、本記事の意味での機密ではありません。停止確認が必要な区分は、より狭く具体的です。
- ソースコード。 独自仕様、未公開、または競争上重要なシステムのコードです。
- 未公開の財務数値。 公表前の四半期決算、社内予測、価格戦略などです。
- 未発表の製品計画や事業計画。 機能ロードマップ、買収候補、未公表の提携などです。
- セキュリティの詳細。 脆弱性、認証情報、トークン、非公開URL、アーキテクチャ図、本番環境の設定などです。
- NDAの対象となる契約や条件。 顧客契約、サプライヤーとの契約、署名によって秘密保持を約束したものです。
- 文書化された営業秘密。 雇用主が明示的に営業秘密と表示したものや、そのように管理しているものです。たとえば、配合、工程、相応の費用をかけて構築した顧客リストなどが該当します。
- 個人データや規制対象データ。 営業秘密に当たらなくても、顧客、従業員、患者、学生などに関するデータは対象です。
定型的な社内メモの初稿、公開済みの求人情報、一般的な作業手順に関する質問は、この区分には入りません。AIを恐れるのではなく、本当に別の扱いが必要な限られた情報を見分けることが大切です。
単なるIT上の配慮では済まない理由
職場向けのAIガイダンスでは、これをポリシー遵守の問題として説明することが多く、それ自体は正しいものの、実際の営業秘密に関する重大性を十分に表していません。米国法上、情報が営業秘密として保護されるには、所有者が「当該情報を秘密に保つための合理的な措置を講じている」必要があります(18 U.S.C. § 1839(3)(A)、Economic Espionage Actで制定され、Defend Trade Secrets Actで改正)。保護は、情報に価値があることや未公開であることだけでなく、実際に管理し続ける継続的な取組にも左右されます。EU法も同様の基準を定めています。営業秘密は、情報を適法に管理する者が、状況に応じた合理的な措置を講じて秘密にしてきたものでなければなりません(Directive (EU) 2016/943第2条第1項(c))。
個人向けサービスにも利用規約はありますが、その規約が、対象の情報に必要な秘密保持、セキュリティ、保存期間、保存場所、データ処理について、雇用主が交渉した条件とは限りません。実際の営業秘密を未承認の提供者へ送ると、所有者が講じている合理的な秘密保持措置を損なう可能性があります。個別の事例が法的な開示に当たるか、保護に影響するかは、規約、管理策、事実、管轄によって異なります。従業員が製品名だけを根拠に判断すべきことではありません。
画面上のチャットを削除しても、すでに行われた送信を取り消すことはできず、インシデント対応や証拠保全の義務を満たせない場合があります。誤って貼り付けたら作業を止め、機密を再びコピーすることなく、使用したツール、アカウント、時刻、データ区分を記録し、雇用主のセキュリティまたはプライバシーに関する手順で速やかに報告してください。削除、認証情報の変更、提供者への連絡、証拠、通知については、雇用主の指示に従ってください。
損害を生む誤解
秘密が外部へ公開されたかどうかだけでリスクを判断すると、すでに問題が始まっている可能性を見落とします。未承認の第三者サービスへの送信は、その後に情報が公開されなくても問題になり得ます。製品プラン、テナント設定、契約、提供者の管理策はそれぞれ異なり、ブランド名や「エンタープライズ」という表示だけでは承認済みだと判断できません。正確な利用経路を評価できるのは、雇用主側で権限を与えられたポリシー責任者です。職場のプライバシーとデータ衛生では、利用するツールが分かった後に、実際のデータ取扱条件を確認する方法を説明しています。本記事では、判断がつかない間は機密を貼り付けないという、より限定的なルールを扱います。
二つ目の誤解は、「チームのみんながやっている」ことを問題ないという証拠にすることです。Samsungの事例では、会社が気づく前に、複数のエンジニアが個人としてはもっともらしく思える同じ選択を、それぞれ独立にしていました。同僚の行動は、確認の代わりにはなりません。
三つ目の誤解は、このルールがエンジニアとソースコードにだけ当てはまると思うことです。財務数値、買収メモの初期稿、未公開の価格区分を含むスプレッドシートも、個人アカウントへ貼り付けた瞬間に同じように雇用主の管理外へ出ます。扱う人はエンジニアではなく、財務、営業、業務部門にいることも少なくありません。以下の6区分確認は、役割や部門にかかわらず同じように適用されます。
6区分の停止確認
雇用主が明示的に承認し、法人向けに設定したアカウント以外のAIツールへ何かを貼り付ける前に、次のいずれかに当たるか確認してください。
- 未公開または独自システムのソースコード。
- まだ公開されていない財務数値。
- 未発表の製品、機能、または事業計画。
- セキュリティの詳細。脆弱性、認証情報、本番環境のアーキテクチャなど。
- 署名済みのNDAまたは秘密保持条項の対象となるもの。
- 雇用主が機密と分類したもの、およびポリシーや法律の対象となる個人データまたは規制対象データ。
一つでも当てはまるなら、止めてください。雇用主の正式なAI利用ポリシーを見つけて読むことが、この種の情報に使える承認済みツールが存在するか確認する最初の一歩です。承認済みツールがある会社も、まだない会社もあります。どちらかを推測で決めることこそ、本記事が防ごうとしている誤りです。
代わりにすること
- 雇用主が承認した、そのツール・テナント・アカウント・データ区分だけを使ってください。 仕事用のメールアドレスや「エンタープライズ」という宣伝上の表示は、それだけでは根拠になりません。
- この種の情報に使える承認済みツールがなければ、まだAIを使わない。 便利さがリスクに見合うと一人で決めず、例外手続きがあるかを上司またはIT/セキュリティ部門に尋ねてください。
- ポリシーが抽象化したパターンについての質問を認めている場合は、合成データまたは必要最小限のデータを使い、再識別、業務ロジック、機密情報、個人データについて改めて確認してください。非識別化はリスク評価であって、検索と置換の作業ではありません。
直近のAI会話を確認する
機密情報を新しい場所へコピーせず、最近の業務関連のAI利用を確認してください。未承認のツールへ何かを入力した可能性があるなら、雇用主のインシデント報告手順を速やかに利用し、指示がない限り証拠を自分で削除したり変更したりしないでください。漏えいした可能性がある認証情報は、承認済みの緊急手順に従って変更します。業務機密の貼り付け停止カードには、貼り付ける前に行う確認をまとめています。
ICOの内部AI利用ポリシー、NCSCの安全なAI開発ガイダンス、ICOのデータ最小化ガイダンスは、承認済みシステム、インシデント対応、セキュリティ、必要最小限のデータという管理策を支持しています。これらの資料だけで、個別の開示が持つ法的効果を判断することはできません。



